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2004年03月01日

笑わせる商社マン〜第一章 不幸を呼ぶ一言〜

 その男(仮にNとしておく)は、冒険心が旺盛といえばよいのか、それとも、単に何も考えていないというべきか、とにかく無鉄砲な男である。

 昭和61年(1986年)といえば、阪神タイガース21年ぶりの優勝の翌年である。清原、桑田といった選手がプロ野球に入団し、プロ野球新時代の幕開けを予感した頃でもある。
 「今年は藤井寺球場に行くのは30回だけにして、就職活動に専念するぞ」
 Nは、このとき以外には予備校時代にしかない、人生で二回目の気合を入れていた。おかげで、自宅の鳥篭の鸚鵡までが、「専念するぞ」、「専念するぞ」と口走っていた。

 Nは、梅雨もそろそろ明けるかということになって、大阪は北浜にあるS電気の会社説明会に向かった。
 当時は、後にバブル経済と呼ばれる好景気時代に差し掛かった頃であったが、誰もがそれを実感できず、バブル経済なる言葉もまだ存在していなかった。
 各企業もその後数年続くことになる大量採用には踏み切っておらず、Nにとっては厳しい就職活動であった。
 中でもS電気の人気は非常に高く、受付開始時間には既に50人ほどの列ができあがっていた。
 近鉄バファローズのチケットを取るとき以外は滅多に列に並ぶことをしないNは、気合を入れていた就職活動にもかかわらず、わずか10分程で並ぶのがいやになってしまった。

 その日、S電気のあるビルでは他の会社も多数会社説明会を行っていた。
 Nは、並んでいるよりは他の会社を見て歩く方が、数打てば当たるで、何か引っ掛かってくるかもしれないと思い、各社を見て回ることにした。
 数社のパンフレットを(得意の)タダ取りし、ぶらぶら進んで行くと、一社だけほとんど学生のいない会社があった。
 「ここなら並ばなくても良さそうだ」
 Nは早速中に入って話を聞いてみることにした。

 入り口から覗くと、学生は一人もおらず暇そうな数人の、40歳から50歳くらいの、いかにも人事担当者とは思えない風貌の連中が一斉にNの様子を窺った。
 Nは逆に、人生で始めてこれだけの人数の人に注目され、恐縮しきってしまった。
 入り口で佇んでいると、そのうちの髪の毛のあまり多くないところだけが特徴の男に声を掛けられた。
「学生さん、少し話でも聞いていかない?」
 と、まるで自衛隊の勧誘か、キャバレーのポン引きのような呼び掛けに、Nは思わず吸い寄せられていった。
 結果的にこの一言の呼び掛けが、将来この会社に不幸を導くということを、この夏の日に予想できたものはいなかったことになる。

 「ゴトーです」
 やたらと語尾に間が抜けた名を名乗った目の大きな男がNに椅子を勧めた。髪の毛の多くないところだけが特徴の男は横に座った。
 「それでは、説明は村上さんからお願いします」
 後藤という男は丁寧に禿頭に頼んでいた。どうやら禿頭は、村上という名前らしい。
 その他にも人がいたはずだが、Nがその時の様子を思い出すとき、この目玉の男と禿頭しか思い出せない。よほどインパクトが強かったのであろう。
 禿頭の説明が15分程度で終わると、
「てなてな訳でですね〜、また連絡させていただくと思いますので」
 目玉が言った。
 そしてNは退席した。数日後採用の連絡が届いた。履歴書も見せていないのに。さすがのNですら、このS貿易という会社は大丈夫なのだろうか、と思ったらしい。

 後に、目玉の後藤はNを人生最大の窮地から救うことになり、禿頭の村上はNと共に本来Nが就職を考えていたS電気に殴りこみにいくことになる。 

【後日談】
 入社後、酔った席でNが村上にこのときの事を話すと、「『学生さん、少しでも話を聞いていかない?』って、飲み屋街でいつも『社長さん、少し飲んでいかない?』と言われてたのをそのまま使ってしまったのかな〜。いや〜、わっはっは・・・」とのことであった。
 新入社員・Nにこの採用担当者、、、数年後の不幸は自明の理と言えなくもない。


(笑わせる商社マン)
 序章   〜マドリッドの朝〜
 第一章  〜不幸を呼ぶ一言〜
 第二章  〜包囲網〜
 第三章  〜仕事は仕事〜
 第四章  〜ポン〜
 第五章  〜暇な男〜
 第六章  〜往路の無い旅〜
 第七章  〜ウクレレおじさん〜
 第八章  〜激走〜
 第九章  〜失くしてはいけないモノ〜
 第十章  〜めんそ〜れ〜
 第十一章 〜毛むくじゃら事件〜
 第十二章 〜煙突〜
posted by ぱんちょ at 04:40| Comment(2) | TrackBack(0) | ぱんちょな笑わせる商社マン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
将来導かれる不幸と後藤氏のN氏を窮地から救うと言うことが非常に気になります。早く続きが読みたいものです。。。
Posted by 私設秘書 at 2006年03月24日 18:25
 現在激しく執筆中です。請うご期待!
Posted by Pancho at 2006年03月24日 18:28
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